うつ病、無職の雑記帳

孤独です。しあわせになりたい。

わたし、定時で帰ります。

f:id:asuniwanarou:20190623154903j:plain

朱野帰子、新潮社
☆☆☆
若手人気女優をキャストして、テレビで実写ドラマ化された小説なので、ライトなラブコメディだと思い込んで読み始めたら、日本人の働き方について真面目に書かれた小説でした。

 

主人公は東山結衣(32)です。結衣は採用されてからずっと定時で帰宅することを信条として働いてきたのですが、無能な上司が中途採用で着任したことにより状況が一変します。

 

この辺り、私もサラリーマン時代に似た経験をしているので読んでいて胸が苦しくなりました。結衣のように実力よりも自己評価が10倍くらい高い上司がやってきて、業務が工程表通りに進捗しないことを部下のせいにするようになったらどうしたらイイのですかねぇ?私は、ひたすら辛抱して、辞令が出て、転勤でバカ上司と他人になるまで我慢したのですが、みなさんはどうされてますか?

 

このような小説に需要があるということは、今日も日本のあちこちで無能な管理職の下で苦労されてる方がたくさんいるってことでしょうね。

 

作中では、結衣が史上最悪の作戦と名高い、インパール作戦について調べ、自らと重ねるということをしています。私もバカ上司の尻拭いをしていたころに太平洋戦争について調べていたので、普通の人よりは詳しいです。そこで、作中の記述で違和感を持った箇所を書いておきます。

 

インパール作戦を立案した牟田口廉也中将は作戦失敗後に人事異動で士官学校の先生になるのですが、作中ではこれを栄転という扱いにしています。これは誤りだと思います。インパール作戦に関わった高級将校たちのほとんどは懲罰人事で更迭されました。牟田口中将は陸軍上層部から能力に問題ありとされ、実戦の指揮官から外されたというのが真相です。

 

作中では、牟田口中将のその後について書かれていないので紹介しておきます。牟田口は日本に帰り、77歳まで生きました。晩年は自己弁護活動を行い、インパール作戦の責任を問われると、「あれは私のせいではなく、部下の無能のせいで失敗した」とかたくなに主張したそうです。後悔や、無駄死にした兵士たちへの謝罪を口にすることなく天寿を全うしました。葬儀の際には、遺言により、自説をパンフレットにして参加者に配布しました。馬鹿は死ななきゃ治らない、という見本です。

 

最後に、この本に共感する人がいるうちは日本の景気が良くなるなんてことはないと思います。せっかくの努力が水の泡ですからね。