内村光良、角川書店
☆☆☆
小さな田舎町で暮らす、平凡な一家の長男である桜井アキオが中学2年生から高校卒業するまでを描いた青春小説です。
アキオは特別な才能がある男ではありません。しかし、人懐っこくて、爽やかで、男らしいナイスガイです。
あとがきで、作者である内村さんが、自分の経験を盛り込んでいると言っている通り、物語は1980年代を舞台にしています。そのため、現在50歳の私はドンピシャで、
『この時代の思春期の恋愛ってこんなだったよねぇ』
と懐かしく読ませていただきました。あれから何十年も年月が過ぎ、アキオに高校生の子供がいてもまったく不思議じゃないわけですが、もし、アキオの子供がこの物語を読んだら何を思うのでしょう?興味深いですね。
物語の中ではアキオの失恋が描かれているのですが、ふられたアキオがカッコイイんです。アキオが自分のことを「俺は寅さんみたい」と思う箇所があるんですが、最近の小説やテレビドラマではアキオのような、
【顔で笑って、心で泣いて】
なんてことが出来る主人公がいなくなったと思います。昭和の時代は、こういうことが出来る男をカッコイイとする風潮があったけど、今はありませんね。寂しいことです。
アキオが自宅でサザンを聴くシーンがあるのですが、サザンは今も現役バリバリです。浮き沈みの激しい芸能界で奇跡的なことですよね。そのことに改めて気づいて驚きました。