うつ病、無職の雑記帳

孤独です。しあわせになりたい。

憂鬱なハスビーン

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朝比奈あすか、講談社

☆☆☆

タイトルの《ハスビーン》って言葉が分かりづらいと思います。作中にこれを説明している箇所があるので、転載します。

 

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ガイジンはさ、一発屋のことをHas beenって言うんだって。Mr.Has been.かつて何者かだったヤツ。そして、もう終わってしまったヤツ。
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東京大学を卒業し、外資系の一流企業に入社し、東大で同級生だった弁護士の男性から熱心にプロポーズされて結婚し、そして辞職して今は一人気ままな専業主婦の凛子(29)が主人公です。

 

私が読んだ感想は、

 

「こんな人生もあるのかな」

 

って感じです。

 

凛子はいつも不機嫌で憂鬱です。その理由は本の最後で明かされるのですが、読者はその理由を知らされずに読み進めることになるので、私は凛子をただの嫌な女と思いながら読んでいくことになりました。そこで、先に理由を明かしておきます。

 

凛子は東大を卒業して、野心を胸に一流企業に入社するのですが、ビジネスの世界では成功することができずに自信を無くし、ついには適応障害になって自己都合退職しています。

 

凛子は人間を見ると面接官のように採点して、心の中で容姿や言動を馬鹿にします。ですが、《勉強ができる》ということで築き上げたプライドを粉々にされた後の女が、自分を守るために無意識にやっていた行動と見てあげれば理解できます。

 

凛子の旦那さんは裕福な家庭の生まれで、高給取りで、凛子を愛していて、凛子との間に子供をもうけたいと願っているのですが、凛子は子供が嫌いです。仕事がだめなら、良い母親になるということをチラッと考えるのですが、それは選べそうもありません。

 

じゃ、仕事に再挑戦すれば、と思うのですが卒業後にたいした実績もない凛子を雇ってくれる会社はどれも物足りないのです。旦那さんの稼ぎが良くて、凛子は経済的に困っていないので、求職活動に必死さはありません。それよりも自分にふさわしいステータスがある仕事を探しています。でも、ありません。

 

これから自分はどうやって生きていったらイイんだろう、というお話なんですが、凛子の出発地点が東京大学なので、このお話に共感できる人ってどれくらいいるんだろう、って思います。

 

まぁ、才能があるかどうかなんて、やってみないと分からないところがあるから、受験戦争を勝ち抜いた力が、そのままビジネスの世界でも使えると思った女の末路ってことなのか、、、

 

欠点がある人間の方が私は親しみがもてるので、もう少し凛子が丸くなって、他人を採点するクセを直してくれたら友だちになれるかもと思いました。でも、とりあえずこの本の中に出てくる凛子とは他人でいたいですね。