冨士本由紀、双葉文庫
☆☆☆
二人の主人公の目線で物語が進行します。と言っても、恋愛小説ではありません。
一人目:中堅食品メーカーで出世コースから外れ、関連子会社の社長になった58歳の男。
二人目:服飾デザイナーを目指して努力するも挫折し、お金が底をついて仕方なく58歳男の経営する会社で肉体労働する28歳の女。
起承転結が上手な小説だと思いました。
始まりで、二人は自分の将来に光が差し込んでいるように感じているのですが、それを掴もうとすると厳しい現実に直面するのです。
そこから二人の運命は下降の一途をたどるのですが、終盤で運命が底を打ち、少しだけ上向いて終わっています。
いつまでも若いと思い込んで年甲斐もなく28歳の女にちょっかいをだす初老の男と、自分は特別な何かになれると信じている28歳女の物語です。
小説にリアリティがあると思ったのは、中盤で二人の運命が下降線をたどるところです。実生活でも悪いことって、続いて起こる気がしませんか?
私は現在、52歳なので、この小説の男を反面教師にしないといけないな、と思いました。若い子たちは、たしかに可愛いのですが、その子たちから相手にしてもらえるなんてけっして考えてはいけません。離れたところから眺めて、目の保養にするくらいにとどめましょう。