柴田よしき、文藝春秋
☆☆☆
平日の13時から30分間、民放テレビ局で放送される、いわゆる【昼ドラ】と呼ばれるドラマの原作にピッタリの物語です。
舞台は百合が原高原と呼ばれる高原です。バブル景気だった80年代にリゾート地として開発されたのですが、バブル崩壊後、急速に寂れてしまい、あちらこちらにその残骸が点在している町です。軽井沢をイメージしていただければちょうどよいと思います。
そんな町に、少しワケありな感じのする35歳の女、奈穂が喫茶店を開業します。奈穂は土地に縁のある人間ではなく、バブルの残骸である空き家だったペンションを買い取って、一人で東京から移り住んだのです。
もともと女性誌の編集者だった奈穂が、喫茶店を黒字にするために努力する姿と、喫茶店に集まる人々との交流が描かれています。
登場人物には30歳以下の人は一人も登場せず、誰もが何かしらの後悔を抱えながら生きています。また、東京で暮らしている人にはうかがい知れない田舎の厳しい現実も描かれています。
30過ぎるまで生きて、一つも後悔がない人っていないと思うのです。なので、これを読んだたいていの人は、
『みんな色々抱えながら生きてるんだなぁ』
と慰められるんじゃないでしょうか。
読み終わったあと、【別れは出会いのはじまり】、と前向きな気分になれるのがお勧めポイントです。