朱川湊人、双葉社
☆☆☆
主人公の矢崎瑠璃(27)は、世間の日陰ばかりを歩いてきました。そんな瑠璃だから、訳ありに見える女の子が目の前で万引きしているのを見逃すことが出来ずに捕まる直前で助けてしまいます。
女の子の名前は、佐藤ジュラ(20)。知恵遅れがあって、見かけは成人女性だけど、言動は小学生高学年くらいです。
ジュラはダメな父親が作った借金のかたに暴力団に引き取られ、性風俗店で働いています。
そういったことを不憫に思った瑠璃は、暴力団のお金とジュラの身柄を盗み出し、逃避行を始めます。
そんな不幸の星の下に生まれた二人が物語の中心にいるので、社会の底辺で生きている人たちばかり出てくるのですが、そういった人たちを瑠璃が上手く言い表しています。
『人間というのは頭と心、おまけに体がすべてバラバラだから、本当に始末に困る。』
本当にそうですよね。程度の差こそあれ、完璧に合理的な人生を送っている人なんていないと思います。破滅的な生活を送る人は、このバラバラが大きいのです。
狡猾で残忍な暴力団に追われる二人ですが、親切な人との巡り合わせもあって、物語の最後まで決着が分からないので、読み終わるまでハラハラが止まりません。果たして、二人は暴力団から盗んだお金で人生をやりなおせるんでしょうか?