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石田徹子という弁護士を主人公にした長編小説です。徹子が司法試験に合格したところから、セミリタイアして指名があった場合にのみ弁護士活動をする70代までが描かれています。
よくある法律を武器にして巨悪と戦う弁護士小説ではありません。徹子は民事訴訟を主に手掛ける弁護士なので、市井の人々の生活に密着した法律活動をします。そのために、さまざまな人々の人生に深く関与することになるのです。
ここで、もう一人の主人公ともいうべき小谷夏子を紹介します。夏子は徹子と同年齢です。無作為に10人の同年齢女性を集めたとき、容姿が上から2番目か3番目に綺麗な女性なのですが、男をその気にさせる天才です。
その才能を生かして男からお金を巻き上げるのですが、いつも詰めが甘くてトラブルになります。そのときに、徹子を指名して解決に当たらせるのですが、それが物語の始まりとなっています。
私は、この本を読むまで詐欺師というのは人から嫌われるような人間がやるものだと思っていたのですが、裏街道を長く歩いてきた人物が弁護士になりたての徹子に諭す場面で、
「あんたは誤解している。詐欺師っていうのはね、人から好かれるような人間じゃなきゃできないんだよ。だって、そうでなけりゃ疑いもせず喜んでお金を払ってくれるわけないじゃないか。」
と言うのがとても心に残りました。
夏子が男に近づく方法と徹子が尻拭いのためにする弁護士活動を通じて、誰もが何かしらの荷物を担いで人生を歩んでいるんだなぁ、としみじみ思わされます。
たくさんの男が騙されるので、どんな人でも一人くらい共感できるキャラクターがいるはずです。
号泣!、とかの感動ではないのですが、じわじわと感動することがたくさん書いてあるので、私はこの本を強く推薦します。ぜひ、手に取って読むべき本です。