うつ病、無職の雑記帳

孤独です。しあわせになりたい。

麦元三歩の好きなもの

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住野よる幻冬舎
☆☆☆
大学の図書館に就職して間もない若い女性、麦本三歩が主人公です。

 

三歩は集中力があり、そのため勉強が得意でした。まじめに勉強し、良い大学に入り、本が好きだったので、図書館司書になりました。

 

しかし、三歩の武器である集中力は、仕事をする上では欠点にもなるようです。過集中で一度にたくさんのことができないので、他の人なら気づく小さなトラブルを見過ごし、先輩にしょっちゅう怒られています。

 

ですが、反省しすぎないのが三歩の長所です。すぐに自分が好きなものを頭に思い浮かべて、幸せな気持ちになり、すみやかに復活を遂げるのです。

 

12章に分かれていて、それぞれで三歩の好きなものが語られています。そのどれもがささやかなもので、特別な才能の持ち主だったり、大金持ちだったりしなくても手に入れられるものなのが好印象です。

 

例えば、《歩くのが好き》、《図書館が好き》、《年上が好き》などなどです。

 

三歩の人柄を紹介した箇所を引用します。
・・・・・
(三歩の日常には)大したことは起こらない。
謎も事件もファンタジーもない。
そういう毎日の中どう生きたってきっとそんなに変わりはしないんだろうと三歩は思っている。でも出来ればどうか自分も、嫌いなもののことじゃなく、好きなものの話をしていたいと三歩は願う。
麦本三歩とは、そういう慎ましやかで贅沢な、どこにでもいる大人のことなのだ。
・・・・・

 

私事ですが、この本を読んでいるとき、母が家の中で転んで寝床からまったく起き上がれなくなり、おむつをする生活になりました。介護が一層辛くなり、落ち込んでいた時、この本を読んで救われました。辛い時にも好きなものを頭に思い浮かべ、できれば三歩のように深刻にならずに呑気に生きていこうと思えたからです。

 

不幸に目を向けるんじゃなく、ささやかでも好きなものに目を向けて生きていけたらイイな、と思いました。