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主人公は、40代後半の吉永シロウです。シロウはどんな男かというと、いわゆる《チャラ男》です。職を転々とし、今はフリーのコピーライターをしています。
そのため、文章も非常に軽いノリで書かれているのですが、内容はなかなかに深いものがあります。
何の取柄もない人間が、フラフラ、好きなことだけやって40代後半まで生きるとどうなるか、どんなことを考えるようになるかが分かる本です。
ただし、シロウはいたって善良な男なので友だちがたくさんいます。でも、お金はありません。
自分自身、思い通りに生きられないことに鬱々としているのですが、友だち(堅気の人はいない)のことを優先させて損をするお人よしでもあります。
それでも、この本は現実よりもだいぶん世の中を甘く見積もっているな、と思いました。シロウは、毎晩、友達と飲み歩いたり、大麻を吸ったりしているのですが、底辺のコピーライターがこんなに自由に使えるお金があるとは思えません。まぁ、そうではあっても私は読んでよかったと思いました。
シロウの友だちが、
「堅気の人しか普通に生きられない社会なんてつまらい」
みたいなことを言うくだりがあるのですが、その通りなんですよね。
年々、生産性とか、能力主義とか、自己責任とかが幅を利かせ、競争に敗れた人間は生きる価値なし、みたいな世の中になっていると思いませんか?
じゃ、上流階級の人間が有能で立派かと言うと、決してそんなことはないんです。いろいろ考えてみたんですが、
「どうして、こんな世の中になっちゃったかなぁ」
という疑問の答えを見つけられない私です。