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高校を卒業後、漫画家を目指して頑張る男子のお話です。
本の題名に《ウチのセンセー》となっているので、読み始める前は漫画家とアシスタントのお話かと思っていました。しかし、漫画家は物語の始まりからアル中で、漫画を描いたり、主人公と絡んだりすることはありません。漫画家は中盤はずっと失踪しており、ラストではアル中専門の病院に入院してしまいます。だから、漫画家は本筋に関係ありません。
主人公の宏彦は絵がうまく、物語も作れる将来有望な漫画家の卵です。そのため、富山から初めて上京し、出版社へ持ち込んだ漫画がいきなり新人賞を受賞します。
だから、よくありがちな苦節10年みたいな苦労話は一切なく、アシスタントに入った直後から即戦力として活躍します。
実力を認められたので、富山から東京へ引っ越すこともなく、交通費込みのお給料をもらいながらアシスタントを続けます。
「こんな話の何が面白いんだ」
となりそうですが、センセーはアル中でも優秀なアシスタントが揃っていれば漫画は連載を続けることができるということが分かります。こちらが本筋かもしれません。
実際の現場でも大御所といわれるような漫画家は物語を考えたあとはネームと呼ばれるかろうじて人物や背景の雰囲気が分かる下書きしか描きません。あとは全て優秀なアシスタントがやっています。
この本でも、漫画家は【作画能力】よりも【お話を書く能力】の方が求められることがわかります。
漫画の作り方が分かる本で、私のようにすでに知っている人が読んでも面白くないかもしれません。