小山薫、幻冬舎文庫
☆☆☆
建築家として独立した史郎だが、最近仕事がうまくいきません。史郎の実家は銭湯を営んでいます。史郎は長男なのに仕事を理由に父親の葬式にも出なかったほど疎遠になっています。銭湯は父親亡き後、弟の悟朗が経営しています。できれば近寄りたくない実家ですが、なにせお金がありません。銭湯をつぶして不動産で一儲けできれば一息つけると考えて史郎は実家へ帰ります。
こうして始まる物語です。史郎にとってはたんなる不動産としての価値しかない銭湯ですが、そこは地域のコミュニティの場となっていて様々な人生が交錯していました。
時代遅れの銭湯という商売ですが、銭湯がなくなると困る人がいるのです。経済合理性だけ考えたら消滅する商売なのですが、そんな時代の波に乗り遅れた人たちの人生が描かれています。
昭和レトロを愛する人へ推薦する本です。