橋本長道、集英社
☆☆☆
将棋に対して特異な才能を発揮した少女、サラと彼女を取り巻く人々の物語です。
サラは人とコミニケーションを取るのが苦手で小学校を不登校になり、昼間は公園で一人遊びをして過ごしています。サラの家庭は母子家庭。母親はブラジルからの移民で、生活するためには夜の水商売に従事する以外生きていく術がなく、育児には無関心です。
もう一人の重要な登場人物の瀬尾健司は青春の全てを将棋に捧げてもプロの棋士になれず、心に深い傷を負って、パチンコで生計を立てています。
この二人が偶然出会って、将棋を始めることから物語が動き出します。
この小説を読むためには多少の将棋の知識があった方が良いと思いますが、物語の主題は
《才能とは何か?天才とはどういったものか?》
なので、将棋が趣味である必要はありません。
光が強ければ、影が濃くなるように、サラの才能が輝き出すのと同時に周りの人々に濃い影をおとし始めます。ある者はその才能に憧れ、ある者はその才能に打ちのめされます。
何かに打ち込んだ経験のある人ならば、一度は才能について考えたことがあると思います。そんなみなさんに読んでもらいたい一冊です。