うつ病、無職の雑記帳

孤独です。しあわせになりたい。

大家さんと僕

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矢部太郎、新潮社
☆☆☆
お笑いコンビ・カラテカのボケ担当の矢部さんが、偶然移り住んだ賃貸住宅で起こった日常の出来事を紹介するエッセイ漫画です。

 

その賃貸住宅というのは、木造二階建ての一軒家で、もともとは二世帯住宅として建てられた家でした。その二階で矢部さんが生活し、大家さんは一階で生活しています。

 

矢部さんは39歳、大家さんは87歳のおばあさんです。

 

この漫画が成立するのは、ひとえにおばあさんのキャラクターによります。

 

まず、店子との間合いが絶妙なのです。私も賃貸アパートで長年一人暮らしをしましたが、どこのアパートでも大家さんと直接会う機会など無く、仲介役の不動産屋さんと事務処理したあとは月に一度、大家さんの銀行口座へお金を振り込むときぐらいしか、大家さんを意識することはありませんでした。

 

しかし、このおばあさんは矢部さんが家に帰れば、「おかえりなさい」と電話をくれるし、不在中に雨が降れば洗濯物を取り込んでくれます。家賃を納めるために一階を訪ねれば、家の中に招き入れてお茶を振る舞ってくれるのです。

 

次に、おばあさんの立ち振る舞いです。おばあさんの出自については描かれていませんが、言動から察するに上流階級の出身で、庶民代表の矢部さんが異文化交流する様子がおかしいのです。でも、決して嫌味なお金持ちではなく、知性と教養を兼ね備え、ユーモアもある素敵なおばあさんです。

 

そして、幸いだったのは、矢部さんにこのおばあさんのキャラクターを受け止められる素養があったことです。こんな二人が偶然出会ったことは奇跡です。これだけ間合いを詰められると不快に思われる方も多いと思うのです。しかし、矢部さんはおばあさんと一緒に旅行をするまでに仲良しになってしまいます。強制されたわけでもないのに、大家さんと旅行する店子なんて聞いたことがありません。

 

おもしろくて、心が温まるエッセイ漫画を探しているなら、ぜひとも購入するべき一冊です!