無職で、ひきこもりな私ですが、東京芸大で声楽を勉強し、お嬢さんにピアノの英才教育をほどこしているママさんとお話する機会がありました。
私は、東京芸大に入学するにはたくさんのお金がかかると思っていたので、そのことを大変ですね、と言ったら、
「東京芸大は、貧乏人が行く所です」
と言われてしまいました。私は、彼女の金銭感覚と自分のそれがかみ合ってないことにビックリしました。興味がない人のために解説すると、
①グランドピアノが高いと思うのだが?
ピアノで音大を目指そうとしたら、グランドピアノを所有する必要があります。入門機種でも約二百万円します。もちろん、定期的にメンテナンス費用もかかります。
②専用の防音室が必要
普通の家にグランドピアノを置くことはできません。なぜなら、重さで床が抜けてしまうからです。床を強化する必要があります。また、毎日何時間も練習するので、近所迷惑にならないように防音室に改修する必要もあります。
③レッスン料が高いと思うのだが?
東京芸大に入学しようと思ったら、生徒を東京芸大に入学させた実績のある先生に師事する必要があります。そういった先生のレッスンは1回で1万数千円かかります。
これら、①~③の環境を整えてあげられる家庭って、私はお金持ちだと思うのですが、音楽家を志す人にとってはこれで精一杯だと貧乏なんだそうです。
そのママさんが言うには、
④夏休みなどの長期休暇には欧州の有名演奏家のセミナーに参加するため渡欧したい。
⑤時間が許す限り有名演奏家のコンサートを聴きに行きたい。
⑥音楽大学を目指す人たちとの交際費が馬鹿にならない。
⑦発表会、コンクールのたびに衣装代や先生への謝礼がたいへん。
などなど・・・、音楽大学に入るまでには湯水のようにお金がかかるそうです。そんな世界で、音楽が好きだけど④以降のことが経済的に難しい子供たちが目指す音楽大学が東京芸大なんだそうです。また、私立の音楽大学、特に桐朋学園にはお金の使い道に困っている家庭の子女しかいないと言って、そのママさんは妬んでました。
このように、はじめて聞く話がたくさんあって面白かったのですが、私の生活圏からはあまりにかけ離れた世界なので、どこか空想の世界のように感じられました。
そのママさん曰く、クラッシック音楽の演奏家を目指す人間にとっては、お金持ちの家に生まれることも才能のうちなんだそうです。たしかに、本人が努力せずに生まれた時から手にしている能力を才能と定義すればそうなのかなぁ、と思いました。
家に帰って、
「子供って、生まれた家がお金持ちかどうかでスタートラインが随分と違うよなぁ」
と独り言を言ってしまいました。なので、あんまりなんでもかんでも自己責任って言う社会風潮には賛成できない私なのです。