室積光、双葉文庫
☆☆☆
私は知らなかったのですが、映画の原作として使われた小説です。
小森正一(40)は、最近何を食べてもまずく、笑うこともありません。家庭では妻子との会話もなく、会社では無気力な部下の態度にイライラしています。そんなある日、通勤電車の社内で他人に迷惑をかけていた女を思わず殺してしまいます。
するとどうでしょう。活力が湧いてきたのです!今まで抑え込んできた正義感を開放して、社会に害毒を垂れ流している人間を殺すことで、生きがいや達成感を取り戻すことに成功したのです。小森は拳銃を手に入れ、西部劇の保安官のように殺されても仕方ない悪人を探して街を歩き回ります。
さらに、このことが自信になって仕事は順調に回り始め、妻との夜の生活も復活し、順風満帆です。
ところが、秘密の活動にひょんなことから仲間が加わり、少しずつ人数が増え、
【KSC】
という団体の会長に祭り上げられてしまいます。表向きは《小森生活向上クラブ》なんて名乗っていますが、本当は《小森殺人クラブ》なのです。
組織として活動することで殺人がシステマティックになり、小森が会ったこともない人間が標的になることが増えます。しかし、最終的に死刑判決を下すのは小森の役目なのです。
「本当に殺してイイのか?」
と悩む小森。物語のラストで小森はどんな決断をするのかドキドキしながら読みました。