垣谷美雨、中公文庫
☆☆☆
私は、無職でうつ病の51歳です。貯金を切り崩しながら生活しているので、この本はとても興味を持って読むことが出来ました。
【お金がない】
ってことは人間の行動を制約します。心までも余裕をなくし、たえず惨めな気持ちになります。そのことがストレートな文章で最初から最後まで書かれてあって良かったです。
また、50代である主人公の後藤篤子が見ること、聞くこと、思うことが全て私が経験してきたこと、今現在思っていることに一致するので、
【私だけじゃない!】
と叫びたくなるくらいに嬉しくなりました。
親の介護や、冠婚葬祭に莫大なお金がかかることに悲鳴を上げる姿は同じような経験をされた方々の共感を必ず呼ぶことでしょう。
篤子が貧乏になっていく過程で、大きな原因になっているのが、
【世間体を気にすること】
です。以前、テレビで多重債務者を借金取りから救出する活動をしている慈善団体のリーダーが、多重債務に陥る人をたくさん見てきた結果、3つの特徴があると思うようになったそうです。それは、
①自信がない人
②見栄っ張りな人
③立派なことを言うが実行しない人
なのですが、物語の前半で篤子の行動は②に該当します。しかし、中盤から方針転換し、後半では身の丈に合った生活をするようになります。そのことがハッピーエンドへとつながります。この辺りは、50代で貯金が1千万円ない人たちには大変勉強になるので参考にしてください。
【金は天下のまわり物】と言いつつも実際には貧乏人の所にはビタ一文まわって来ません。篤子のように身の丈に合った生活を徹底するほかには、生き残る手段がないことが分かる良書です。