山田ルイ53世、新潮社
☆☆☆
一発屋と呼ばれるお笑い芸人の方々をあつかったドキュメントです。作者自ら、ご本人に直接取材などもしていて本格的です。
いたるところに自虐ネタが散りばめられていて、ページをめくるごとに「プッ」と笑わせてくれるのも魅力です。お笑い芸人は失敗しても、それを笑いにできれば儲けものなのです。
本書では、10人の一発屋が登場しますが、
「こんな人いたかしら?」
と思う人も散見されます。作者もそのことは承知していて、そういった方は「0.5発屋」などと正直に紹介されてからお話をスタートさせています。
芸能界には一発当てた後、世間から忘れ去られ、今は生活保護を受けているなんて笑えない人もたくさんいると思うのですが、ここで取り上げられた方々はみなさん明るく前向きで、ネガティブな感情にとらわれている方は一人もいません。それは、作者が一発屋の定義を、
「今も、もう一発当てることを考えて取り組んでいる人。自主廃業した人は一発屋と言わない。」
としているからです。アルバイトしなければ、生活できない人も出てきますが、そんな人も復活を信じてネタを作り続けているのです。
それと、芸能人の中でも最も不安定な職種である【お笑い芸人】を目指すような人は、将来のことを心配してクヨクヨ、メソメソする人は元々いないのでしょう。取材されているさいの受け答えでも、読んでいる私が、
「そんなんで、これから大丈夫?」
と思うようなこともあっけらかんとお話されていて、リアル植木等、
「そのうちなんとか、なるだろう~(^^♪」
といった感じです。
芸能界は人口密度がとても高い小さな島だと思います。新しい人が上陸したら、先住民の誰かが出ていかなければならない掟なのです。ですから、これからもこのような【あの人は今】みたいな企画には不自由しないでしょう。